BACKGROUND
利島村は伊豆諸島に位置する、一周8km、人口300人ほどの小さな離島です。中央に宮塚山(標高507m)がそびえ、美しい円錐形の火山島で、島全体が約20万本の椿林に覆われています。
利島は椿油の生産で知られるほか、イセエビや「ボッコ」と呼ばれる大きなサザエが特産品です。島の漁業者は自ら漁獲量を制限し、資源管理を行ってきましたが、2017年ごろから漁獲量が大幅に減少してきました。
この減少の原因として、黒潮の大蛇行による水温や水質の変化、冬場の水温上昇によるアイゴやイスズミなどの草食魚の活動活発化に起因する磯焼けなどが挙げられています。今の環境に適応し、緩和策を島内で講じるために、まずは現状の把握から始めます。
PROJECT TASK
磯焼けを緩和する方法の検討
漁業者への聞き取りや環境DNA調査を通じて、草食魚であるアイゴやブダイ、イスズミなどが生息していることが確認されました。
磯焼けの緩和には、これらの草食魚の個体数を適切に抑制することが重要であり、一つの仮説として、草食魚の稚魚を捕食する大型魚を島の周辺に引き寄せることが解決策となるのではないかと考えています。
そのためには、大型魚の餌となる小型魚が豊富に生息できる環境を整える必要があり、さらに小型魚の餌となる付着珪藻を増やすことが求められます。そのために、窒素、リン、ケイ素といった栄養塩を十分に供給し、維持する方法を検討しています。
離島における陸から海への循環


利島村には川が存在せず、昔から水の確保が島民にとって重要な課題でした。
川がない理由として、利島に広がる火山岩類は亀裂に富み、透水性が非常に高いことが挙げられています(熊井・工藤, 1979)。実際に雨が降った後も、土を掘った穴に水が溜まることはなく、浸透している様子が確認されました。
一般的には、森から海への栄養供給は川を通じて起こるとされてきましたが、最近では、地域によっては海底湧水からの栄養塩供給が重要な役割を果たしていることが明らかにされています(T. Nakajima et. al., 2024)。
そのため、川がない利島村では、海底湧水による栄養塩の供給がさらに重要な役割を担っているのではないかと推測しています。
潜水とラドン調査。海底湧水の探索


まずは、海底湧水が見られるエリアを探索しています。
新井章吾氏((株)海藻研究所 / (同)シーベジタブル)、杉本亮教授(福井県立大学)のご協力のもと、潜水調査に加えて、海底湧水に多く含まれるラドン(及びトロン)の調査を行なっています。
調査の結果から、海底湧水が沿岸域で湧出していそうなエリアは、優れた魚場のエリアと一致しており、漁業者の感覚との関連も見られています。
今後は、更なる海底湧水が見られるエリアの探索や、栄養塩の定期的なモニタリングを継続した上で、磯焼けを緩和する方法を模索していきます。